2014-04-18
京都で開催されている日本脊椎脊髄病学会に参加しました。毎年1000題以上の応募のある、日本有数の学会の一つです。 こちらで、脊椎疾患とサルコペニアの関係の研究結果を発表してきました。
脊椎外科中心の学会で、手術に関連しない慢性期疾患に関する発表は少ないせいか、昨年までは「サルコペニア」に関する発表は自分を含めてごく少数、という状態でした。 しかし、今年は演題・抄録のみならず、質疑応答などでもサルコペニアに言及される先生が増えていました。筋肉とサルコペニアに関する関心が高まりつつある事を肌で感じることが出来ました。
発表の抄録を下に紹介します。
Journal of Spine Research, Vol5, No3, 518, 2014
題名:変形性腰椎症とサルコペニア-地域在住中高齢者における検討-
筆者: 飛田 哲朗、今釜 史郎、村本 明生, 石黒 直樹、 長谷川 幸治
所属:名古屋大学医学部整形外科、 名古屋大学医学部下肢関節再建学
【対象と方法】2013年北海道八雲町住民健診参加者334名(平均年齢65歳、男性141名、女性193名)を対象とした。単純レントゲン腰椎側面像にてL1-S1前弯角の測定とNathan分類による脊椎変性判定を行った。Nathan分類1以下を腰椎症なし(正常群)、Nathan分類2以上を腰椎症あり(LS群)とした。サルコペニアの診断には生体電気インピーダンス法により測定した補正四肢筋量を用いた。統計学的検討として、LS群と正常群の比較にはχ二乗検定、Student’s T検定を行った。さらに腰椎症有無を目的変数とし、年齢、性別、身長、体重、補正四肢筋量、腰椎前弯角(L1-S1)を共変量としたロジスティック回帰分析を行った。
【結果】腰椎症有病率は男性74.5%、女性44.0%で、男性が有意に高かった(P<0.001)。各群におけるサルコペニアの有病率は、正常群28.5%、LS群26.3%で有意差を認めなかった(P=0.66)。ロジスティック回帰分析の結果、男性(OR, 3.25; P<0.001)、年齢(OR, 1.06; P<0.001)、腰椎前弯角(OR, 0.96; P=0.001)が腰椎症の有意なリスク因子であった。補正四肢筋量、身長、体重は有意な因子ではなかった(P=0.33, P=0.96, P=0.11)。
【考察】地域在住中高齢者において男性、高齢、腰椎前弯減少が腰椎症のリスク要因であった。サルコペニアの有無、四肢筋量は腰椎症に関連しないことが初めて判明した。高齢者の診療の際には腰椎変性の有無に関わらずサルコペニアの危険があることに留意する必要があると考えられた。
【ポイント要約】
男性、高齢、前弯減少が腰椎症のリスク要因だった。サルコペニアの有無、四肢筋量は腰椎症に関連しないことが初めて判明した。