痩せた人のサルコペニアと比べ、肥満を伴ったサルコペニアの方がより身体不安定性が強く、移動能力に悪影響をおよぼすことが報告されている。これはサルコペニア肥満(sarcopenic obesity)と呼ばれ、その原因には筋量の低下により基礎代謝が低下し、肥満が進行し、移動能力が低下し、さらに筋量が低下するという負のスパイラルが考えられる。(下図を参照)
日本肥満学会は肥満の定義を「BMI25以上」とし、検査の指標は「腹囲男性85㎝以上、女性90㎝以上」としている。諸外国の論文ではWHOの定義である「BMI30以上」を肥満としている体脂肪率を用い診断法にはまだ統一した基準は無いが、諸外国では男性30%以上、女性40%以上とする報告(文献2)がある。日本では体脂肪率男性25%以上、女性30%以上を肥満とすることが多い(Wikipediaより)。サルコペニア肥満の診断には肥満の定義と前述したサルコペニアの定義であるSMIの基準値の双方を満たすものとする報告が多い(文献3)。
サルコペニア肥満患者に食事制限を行うと、より筋量が低下してしまう。その為、サルコペニア肥満の対策としてレジスタンストレーニング(筋トレ)、高タンパク食摂取を行いながらカロリー制限を行うといったきめ細やかな管理が必要である。そのため、通常の肥満と比べサルコペニア肥満の予防と治療はより困難である(文献4)。
1. Gallagher D, Ruts E, Visser M, Heshka S, Baumgartner RN, Wang J, Pierson RN, Pi-Sunyer FX, Heymsfield SB (2000) Weight stability masks sarcopenia in elderly men and women. Am J Physiol Endocrinol Metab 279:E366-375
2. Waters DL, Hale L, Grant AM, Herbison P, Goulding A (2010) Osteoporosis and gait and balance disturbances in older sarcopenic obese New Zealanders. Osteoporos Int 21:351-357
3. Stenholm S, Harris TB, Rantanen T, Visser M, Kritchevsky SB, Ferrucci L (2008) Sarcopenic obesity-definition, etiology and consequences. Current opinion in clinical nutrition and metabolic care 11:693
4. Li Z, Heber D (2012) Sarcopenic obesity in the elderly and strategies for weight management. Nutrition reviews 70:57-64