サルコペニア肥満の食事で気をつけなければいけないことは、カロリーの摂取不足である。一見ダイエットと矛盾するようであるが、実は肝臓は、絶食時等に糖新生により、アミノ酸等から、ブドウ糖を作り出して、血液中に供給する。すなわち、カロリー不足の状態では筋肉はすぐに異化してタンパク質を分解してしまい、筋肉量の減少が起きる。十分なカロリーを摂取することが大事である。その上で運動をすることにより、筋肉を維持し、基礎代謝を高めたまま体脂肪率を減らすことが可能になる。
サルコペニアの治療法で現在唯一効果的といえるのは、食餌療法と運動療法の組み合わせである。サプリメントやアミノ酸摂取と運動の組み合わせは、高齢者であっても筋量・筋力が増加する。 ただし、運動療法は十分にできる高齢者は実は限られている。関節疾患や認知症などで十分に運動を行えない方も多い。栄養であれば、どんな高齢者でも治療できる可能性がある。
食事・栄養の内容
ビタミンD: カルシウムの吸収促進による骨粗しょう症治療の作用が有名だが、実は筋肉にも、筋組織内のビタミンDレセプターを介して作用する。十分量摂取で筋力増強、転倒予防、骨折予防のエビデンスがある。
ビタミンDが多く含まれる食品: 魚に多い。いわし、鮭、さんまなど。他には干ししいたけも。
タンパク質、アミノ酸: 筋肉をつくるもとであるタンパク質は、アミノ酸から成る。必須アミノ酸は、そのヒトの体内で十分な量を合成できず、栄養分として摂取しなければならない。バリン、ロイシン、イソロイシンは必須アミノ酸の中でも分岐枝アミノ酸(BCAA)は筋タンパク質中の必須アミノ酸の35%を占め、哺乳類にとって必要とされるアミノ酸の40%を占め、BCAAを十分に摂取するように意識する必要がある。
BCAAを多く含む食品:大豆類、鳥肉(鳥胸肉)、マグロ(赤身)、たらこ、チーズ、牛乳など
ビタミンB: ビタミンB群、特にビタミンB6 が筋肉の合成を促進するのに必要であり、効率よく摂取する。
ビタミンB6を多く含む食品: 、牛や豚、鶏のレバー、魚の赤身、ピーナッツなどの種実類
ロコモパンフレット2013(日本整形外科学会)からの引用です.
参考文献:
Bischoff, H. A., H. B. Stahelin, et al. (2003). "Effects of vitamin D and calcium supplementation on falls: a randomized controlled trial." J Bone Miner Res 18(2): 343-351.
Montero-Odasso, M. and G. Duque (2005). "Vitamin D in the aging musculoskeletal system: an authentic strength preserving hormone." Mol Aspects Med 26(3): 203-219.
Bonnefoy, M., C. Cornu, et al. (2007). "The effects of exercise and protein–energy supplements on body composition and muscle function in frail elderly individuals: a long-term controlled randomised study." British Journal of Nutrition 89(05): 731.