アメリカを始めとして海外の手術室は日本と違う所があって驚くことが多いと思います。
10年以上前に初めてフロリダの病院の手術室を見学した際には、見たこともない器械や医療材料があり、水無しで手洗いして、なにより土足(今では日本では当たり前ですが)で魚屋さんみたいな長靴で手術しているのびっくりしました。
米国の手術室で共通して言えるのは、外科医を含めたメンバーが日本と比べてよく言えば自由、ともすれば規律がゆるいです。
外科医は音楽をかけて、看護師・麻酔科医はスマホでネットを見ながら、というのは当たり前です。
手術道具の呼び方は日本と米国でかなり違います。日本でもそうですが伝統的な手術道具にはたいてい発明者の人名で呼んでいますが、その読み方が英語読みになります(コッヘル→クッカー)。例えば電気メスは「ボビー」と呼ばれます。
日本とは全く違うものも多く、戸惑います。 アメリカの外科医同士でも、育った環境で呼び方が違うため、お互いに面白がってます。
僕が聞き取れた単語を紹介します。
追記: インドの病院にトラベリングフェローで訪問した際に、突然手術をまかせてもらえる機会がありました。なれない手術場の中、このボキャブラリーが非常に役に立ちました。
英語(呼び方、発音): 日本語
rongeurs (ロンジュール) : パンチ、ケリソンなどつかむもの。
Leksell rongeurs (レクセル): リウエル(Luer)のような鉗子。 主に骨を削ったり瘢痕組織を切除したり、力の必要な作業に使用
Derrico nerve root retractor (D'Errico)(デリコ) : 神経鉤。(日本のものに近い。)
Murphy Ball Hooks Full Curve(マーフィー、ダブル・ボール) : ペディクルプローベみたいなフック。(椎間孔狭窄が無いか、これでチェック。)
Penfield 4(ペンフィールド・フォー): 粘膜剥離子。日本のものよりややごつい。
Woodson probe(ウッドソン): 粘膜剥離子みたいな
Penfield 1 こちらも粘膜剥離子みたいな
Hibbs(ヒッブス): 大きな筋鈎。術者がコブ代わりに、筋組織を引くことができる。握る位置と刃の先端が、力をかける方向と一致するため、手首の力にたよらず体重をかけて力強く引くことが出来る。肥満者のオペにはとても有用。
pituitary rongeurs(ピチュイタリー): 小さめのパンチ。(もとは下垂体用鉗子か。)
curette(キュレット): 鋭匙(エイヒ)
Foraminal curette: 鋭匙みたいな椎間孔用の剥離子

pick ups、forceps: 鑷子(せっし)、ピンセット
Bobby : 電気メス。(発明者の名前)
Cobb Elevators : コブ・エレバ。 (エレバは「起子」と訳すようです。)
Kerrison Rongeurs : ケリソン鉗子。(これは日本と同じ。)
knife(ナイフ): メス
scisors(シザーズ): クーパー. (英語のほうがシンプルです。)
Picture! (ピクチャー!)
Shot there!
Uh huh! : 透視を出せ! (Uh huh!を使う人はほとんどいない)
Kocher (コッカー): コッヘル鉗子。(日本と発音が違うので注意。)
Operating theater: オペ室、手術場。略してtheater(シアター)とだけ言うこともあり。
バー 綴り不明: Surgical Drill や、サージエアトームのこと。
2017-01-10
2017-01-19 インドGanga Hospital の語彙を追加。
2017-12-21 追記