骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折、装具無しでも治療効果に差は無し

2015-06-17

 

骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折が人口の高齢化とともに急増しています。

Johnellらは2006年に年間140万例発症すると報告し、その数は年々増加しているとされます。

一度骨粗鬆症骨折を起こすと、疼痛のため安静を余儀なくされQOL,ADLは著しく低下するため、高齢者にとって大きな問題の一つです。

骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折は、一般的には保存的治療で治療が可能な疾患です。保存治療には主には装具、コルセットなどによる外固定、内服による疼痛コントロールが行われてきました。

ただ、高齢者にとって長期の外固定は苦痛を与える治療法で、コンプライアンスの低下が問題でした。

今回紹介する論文は脊椎骨折の保存治療を装具あり、なしでランダム化比較試験で検討した研究です。 さらに装具は硬性装具、軟性装具を比較しています。

結果は、装具有無、硬性・軟性装具の間に、臨床成績に差はありませんでした。装具の効果を否定する結果ではありませんが、装具なしも治療の選択肢の一つとして考慮する価値があります。


参考

脊椎圧迫骨折の治療に用いられる装具(コルセット)の種類

 

J Bone Joint Surg Am. 2014;96:1959-66 

Comparative Study of the Treatment Outcomes of Osteoporotic Compression Fractures without Neurologic Injury Using a Rigid Brace, 

a Soft Brace, and No Brace 

A Prospective Randomized Controlled Non-Inferiority Trial 

Ho-Joong Kim, MD, et al.

Republic of Korea 


要約 背景 骨粗鬆症性圧迫骨折に対する腰椎装具の効果は不明である。本研究の目的は装具なし、軟性装具、硬性装具の違いによる治療効果を比較する。

方法 60名の1椎体の圧迫骨折を受傷した患者を装具なし、軟性装具、硬性装具の治療の3群にランダム化して振り分けた。補正後のOswestry Disability Indexは装具なしで平均35.95点、軟性装具で37.83 点、差は-1.88点だった。同様に、補正後のOswestry Disability Indexは装具なしで平均35.95点、硬性装具で33.54 点、差は2.41点だった。フォロー期間中、三群間でODIスコア、腰痛のVAS、前方椎体圧迫比に差はなかった。しかし、三群全てにおいてODIスコアとVASは骨折後に有意に改善し、前方椎体圧迫比は有意に減った。

結語 装具なしの治療によるODIは、軟性装具、硬性装具と比べ劣っていなかった。さらに、腰痛の改善、椎体の圧潰は三群間に差がなかった。


背景

神経症状を伴わない骨粗鬆症性圧迫骨折は良好な転機をたどることが多い。原理上、装具によって骨折部の安静と疼痛の减少、後湾変形の予防が可能とされてきた。しかしながら皮膚障害、清潔を保てない、筋肉の萎縮,

装具が完成するまでリハビリが遅れるなどのデメリットがある。その為、硬性装具はコンプライアンスが低い。

 装具は脊椎圧迫骨折の保存治療の主体となる治療法と考えれられているが、これまで装具療法に関するエビデンスはなかった。本研究の目的は装具なし、軟性装具、硬性装具の違いによる治療効果を比較することである。装具なしの治療法は、軟性装具、硬性装具に劣らないと仮説を立てた。


方法

対象 50才以上、軽微な外傷にともなう急性腰痛、1椎体の前方要素のみの圧迫骨折、mriで診断、神経症状なし。

除外基準、2椎体以上の骨折、認知症、脊椎手術の既往。

コンピューターによるランダム化リストを使用。

硬性装具群は装具が出来るまでは症状絶対安静。軟性装具は既製品を使用。 臥床時以外は装具を使用。装具のコンプライアンスはフォローアップ時に自己申請した。可能な範囲で、安静度は自由とした。

評価項目 プライマリアウトカムは、Oswestry Disability Index(ODI)を用いた。セカンダリアウトカムはVAS、SF-36によるQOL評価、椎体圧潰比率(前壁と後壁の比率)、治療への満足度 を評価した。

ベースラインで補正したODIを評価した。その他の値はANOVAで比較した。


結果

60名の1椎体の圧迫骨折を受傷した患者を装具なし、軟性装具、硬性装具の治療の3群にランダム化して振り分けた。


フォロー期間中、三群間でODIスコア、腰痛のVAS、前方椎体圧迫比に差はなかった。しかし、三群全てにおいてODIスコアとVASは骨折後に有意に改善し、前方椎体圧迫比は有意に減った。


SF36 PCS(身体健康状態評価)は、3群間に差はなかった。さらに3群とも受傷直後、12週後ともに差はなかった。

MCS(精神健康状態評価) は、3群間に差はなかった。ただし軟性装具群、硬性装具群は12週後にMCSの値が有意に下がった。


考察

装具なしの治療によるODIは、軟性装具、硬性装具と比べ劣っていなかった。さらに、腰痛の改善、椎体の圧潰は三群間に差がなかった。

これまでの経験的治療では短期間の床上安静から徐々に安静度を上げていく方法が取られてきた。装具による外固定は受傷後6-8週の間の痛みの軽減に有用であると考えられてきた。しかし、高齢者にとってコルセットなどの装具は忍容性が低く、コストが掛かり、うっとうしいものだった。本研究では装具なしでも硬性装具と同等の治療成績だった。

本研究は装具治療の有効性を否定するものではない。バイオメカ的に脊椎の制動に有用であるとする報告は枚挙にいとまがない。ただ本研究の対象とした安定した椎体骨折では装具有無、種類では差がでなかった。


これまでの報告ではコルセット装着でも後湾変形を防ぐことができないと報告されている。本研究でも椎体圧迫の比率は装具有無で差がなく、矛盾しない。


SF-36 MCS は、12週後の時点で低下した。これまでの研究からも脊椎骨折が身体的、精神的な障害を与えることが知られている。同様に我々の研究でも身体的な疼痛が改善しているにもかかわらず精神の健康の障害が認められた。

やはり骨折の予防が重要だ。


リミテーション

12週と短期間の評価しかしていない。

サンプル数がやや少ない。

装具の忍容性が問題になるが、本研究ではそれぞれの群で2名のみが装具を装着しなかったのみであり、影響は少ないだろう。


結語

装具なしの治療によるODIは、軟性装具、硬性装具と比べ劣っていなかった。さらに、腰痛の改善、椎体の圧潰は三群間に差がなかった。


 

自己紹介

飛田 哲朗 Tetsuro Hida

現在米国に留学中。

脊椎外科医の仕事の傍ら、サルコペニアの研究をしています。

 

 

好きなテレビ:

未来世紀ジパング

 

池上彰さんが出る回とか、最高ですね。テレ東経済番組の面白さは安定してます。

 

好きな映画:

アメリカのSF映画。遺伝子エリートと雑草魂の葛藤がたまりません。同じアンドリュー・ニコル監督の「In Time(タイム)」もいいですね。

 

息子の難病の治療法を開発してしまう銀行家の父の、実話を元にした物語。熱意と戦略がそろえば誰でも病気を治せる可能性があるんですね。

Follow-up of 89 asymptomatic patients with adrenoleukodystrophy treated with Lorenzo's oil

論文のラストオーサーが父親。

 

好きな飲み物:


最近は第3のビールの美味しさにおどろいています。

 

 

 

リンク

朝日新聞、 「筋肉少なく肥満、高齢者の1割 名大、北海道の323人分析」(平成26年6月3日夕刊)

八雲町での疫学調査を取り上げていただきました。

名古屋テレビ UP! 注目ニュース「サルコペニア肥満」

2013年8月2日に放送された内容です。僕の研究を取り上げていただきました。とてもわかりやすくまとまっています。

 

リハビリテーション栄養・サルコペニア(筋減弱症)

サルコペニアのエビデンスが集積しています。勉強になります。

 

整形外科 論文ナナメ読み (JBJSなどなど)

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