転移性脊椎腫瘍の生命予後予測

2011.8.25

スコアリングによる転移性脊椎腫瘍の生命予後予測は、むしろ内科医などの専門外の医師にとって有用かも知れません。臨床上気を付けなければならないのは、徳橋スコアの9-11点の予後予測は、半年以上、であって、決して半年以上1年以内ではない、という事です。患者の状態によっては、麻痺を救うために手術を検討する必要があります。 横浜市立大の山下先生の徳橋スコアの論文を紹介させていただきます。徳橋スコアは、79%の患者で予後の予測が一致しました。実際に今回のstudyでも、9-11点の患者44名中25名(57%)が一年以上生存しています。

 

A prospective analysis of prognostic factors in patients with spinal metastases: use of the revised tokuhashi score

 Yamashita,T, et al. SPINE,36, Number 11, pp 910–917

 

改訂徳橋スコアを用いた転移腫瘍患者の予後予測因子の前向き検討

サマリー

【研究デザイン】 前向き観察コホート研究

【目的】 改訂徳橋スコアの転移性腫瘍患者の予後予測における有用性を明らかにする事。

【方法】 2年以内に脊椎転移と診断を受けた全患者を症状の有無にかかわらず対象とした。1年以上のフォローを行った。研究期間中、一年以内に亡くなった44名を含む85名の患者が解析対象になった。改訂徳橋スコアと生存期間との間の相関を、CoxハザードモデルとSpearmanの順位相関係数で検討した

【結果】平均年齢は60.3歳(35-84)で、生存期間中央値は11.6ヶ月。Coxハザードモデルを用いた多変量解析で、低いperformance status (Karnofsky performance status, 50%-70%)(HR2.92)と、切除不能の主要内臓転移(HR4.44)が短い生存期間の有意な因子だった。 原発巣の種類では肺癌(HR4.25)と腎臓癌(HR2.60)が短い生存期間に対する有意な因子だった。改訂徳橋スコアのグループ分けは、生存期間のグループ分けと優位に相関した。 85人中、67人(79%)の患者は実際の生存期間と予想された生存期間が一致した。

【結語】低いperformance status、内臓転移、肺、腎臓原発は優位に短い生存期間と関連した。改定徳橋スコアは治療法にかかわらず生命予後を予測するのにとても有用であった。ほとんどの患者で、生命予後が予測と一致した。

 


全癌患者の70%が何らかの内臓や骨の転移を起こすといわれる。がん患者の約3分の1が脊椎に転移を起こす。 1990年、徳橋らは、術前のスコアリングシステムを作成し、脊椎転移患者の手術適応と予後を評価した。6個の変数が用いられた。

全身状態、 脊椎以外の転移の数、 椎体転移の数、腫瘍臓器への転移、原発巣の種類、神経症状。徳橋らはその後2005年にこの原発癌の種類を6種類に分けた、改訂徳橋スコアを報告した。このシステムでは、0点から8点は予後6ヶ月以内で、保存治療か、姑息的緩和治療を選択する。9点から11点は予後6か月以上と予測され、1椎体に限局し、内臓転移がない症例に腫瘍切除がまれに選択される。12点から15点は、予後が1年以上と予測され、腫瘍切除が選択される。 しかし、このスコアの以前の文献はすべて整形外科医が患者選択を行い、無症状の患者は含まれていなかった。選択バイアスがあるもしれない。さらに、治療法が生存期間に影響していたかもしれない。

予後の正確な予測は脊椎メタ患者にとって重要である。徳橋らは1990年に初めてスコアを発表し、2005年に改訂版を報告した。現在では他にもいくつかのメタの外科切除や放射線治療のためのスコア方法が報告されている。しかし、これらのスコアリングシステムのすべては、患者選択バイアスがかかっている。今回の研究では、癌センター、脊椎センター両方で2年以内に診断された無症状の患者を含む脊椎メタを前向きに検討した。

 

 今回の結果では、徳橋スコアのうち、PS,切除不能内臓転移、原発巣の種類が生存期間に関連した。放射線治療のスタディーと違い、他の外科治療のスコアリングシステムではPSは組み入れられていない。なぜならば、低いPSの患者は最初から外科治療から除外されているからだ。Chowらは、PSが最も生存期間に影響するとした。よって、予後因子に入れるべきである。

脳、肺、肝臓の転移は、有意に生存期間に影響したが、多くの報告と同様であった。

 

 原発巣の種類は、肺癌と腎癌が有意に生存期間に影響した。腎癌はこれまでの徳橋スコアでは中等度のリスクであったのに反し、我々の研究では有意に生存期間を短くした。細野らのレビューでは、腎癌転移の予後は、良好、中等度、不良とさまざまであると報告している。放射線治療における予後評価の研究では腎癌は、放射線耐性のため除外されている。今回の研究では腎がん患者は12名のみであり、さらなる検討が必要である。

脊椎以外の骨転移と、脊椎転移数はこれまで予後因子に組み込まれてきた。しかし、今回の結果では脊椎メタは予後因子とならなかった。ビスフォスフォネートなどの新たな骨転移治療が影響したかもしれない。

神経症状はこれまで予後因子になるかどうかは意見が分かれていた。細野らは麻痺は有意な因子であると報告した、しかし、今回の研究では、近年の他の報告と同様にFrankel分類は予後予測因子とならなかった。

            改訂徳橋スコアでは、低い点数で予後が悪くなる。0-8点ではハザードレシオが11.5もあり、徳橋スコアの有用性を示した。多くの患者で、徳橋スコアの予後と一致した。腎癌では、あまり一致せず、徳橋スコアではリスクを過小評価しているかも知れない。

              多変量解析では、放射線治療が悪い予後と関連した。しかし、有意差は無いが徳橋スコアが放射線治療群で低くかった。放射線治療は未だ重症患者でも行われており、全身状態の悪さが影響したのであろう。この結果は放射線治療で死期を早めたことを示唆するものではない。(徳橋スコアのほとんどの項目と、全身状態は補正された上で解析されているため。放射線治療の合併症が悪影響を及ぼした可能性は本研究のデザインでは検討できていない。) 

最小侵襲技術の進歩により治療法は変わりつつあり、Gersztenは椎体形成と定位ラジオサージャリーの組み合わせで、迅速な骨折治療と放射線治療が行えることを報告している。

このように徳橋スコアは治療法にかかわらず予後予測に有用だ。(近年の薬物治療、PVPの発達した状況でも、徳橋スコアは以前価値があることを示した研究である。)

 


 

 

改訂徳橋スコア
改訂徳橋スコア
合併症(Charlson comorbidity score)、Karnofsky performance status
合併症(Charlson comorbidity score)、Karnofsky performance status

パフォーマンスステータス(英: Performance Status; PS)ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)のものがよく使われています。

 

グレード0

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発症前と同様に振舞える。

グレード1

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働、座業はできる。例えば軽い家事、事務など。

グレード2

歩行や身の回りのことはできるが、時に少し介助がいることもある。軽労働はできないが、日中の50%以上は起居している。

グレード3

身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している。

グレード4

身の回りのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としている。

自己紹介

飛田 哲朗 Tetsuro Hida

現在米国に留学中。

脊椎外科医の仕事の傍ら、サルコペニアの研究をしています。

 

 

好きなテレビ:

未来世紀ジパング

 

池上彰さんが出る回とか、最高ですね。テレ東経済番組の面白さは安定してます。

 

好きな映画:

アメリカのSF映画。遺伝子エリートと雑草魂の葛藤がたまりません。同じアンドリュー・ニコル監督の「In Time(タイム)」もいいですね。

 

息子の難病の治療法開発を試みる銀行家の父の、実話を元にした物語。熱意と戦略がそろえば誰でも治療法開発に携われる可能性があるんですね。

Follow-up of 89 asymptomatic patients with adrenoleukodystrophy treated with Lorenzo's oil

論文のラストオーサーが父親。

 

 

NYのイタリアンレストランのある一夜が舞台。料理漫画の傑作「バンビ〜ノ!」全巻がこの1本に詰め込まれたような中身の濃さ、事件だらけです。イタリア料理好きにはたまらない数々の料理、ガーリックオイルが恋しくなります。

 

好きな飲み物:


最近はアメリカのマイクロブリュワリーと呼ばれる小規模ビール工房の地ビールにはまっています。Ballast Point という醸造所のSculpin (Indian Pale Ale)というとても味が濃くてフルーティな種類のビールがお気に入りです。

 

 

 

リンク

朝日新聞、 「筋肉少なく肥満、高齢者の1割 名大、北海道の323人分析」(平成26年6月3日夕刊)

八雲町での疫学調査を取り上げていただきました。

名古屋テレビ UP! 注目ニュース「サルコペニア肥満」

2013年8月2日に放送された内容です。僕の研究を取り上げていただきました。とてもわかりやすくまとまっています。

 

リハビリテーション栄養・サルコペニア(筋減弱症)

サルコペニアのエビデンスが集積しています。勉強になります。

 

整形外科 論文ナナメ読み (JBJSなどなど)

JBJSの要約がまめに更新されています。抄読会のネタ探しにぴったりです。

整形外科医のための英語ペラペラ道場

英語論文を書く際の道しるべです。