サルコペニアと脊椎骨折

以前電子版で公開された僕の論文がこの度、紙媒体で出版されたので紹介します。

 

2000名弱の患者での検討の結果、年齢で調整後のサルコペニア有病率は外来患者と比べて有意に高かったです(42%対25%)。骨粗鬆症性脊椎椎体骨折の独立したリスク因子として、サルコペニアと、下肢サルコペニア(sarcopenic leg、下肢筋量低下)を認めました。トレーニングや栄養などによるサルコペニアの治療、特に下肢サルコペニアの治療が脊椎骨折の予防に有効かもしれません。

 

どどんと、全訳を掲載します!

 

T Hida, et al. 

Sarcopenia and sarcopenic leg as potential risk factors for acute osteoporotic vertebral fracture among older women

Eur Spine J (2016) 25:3424–3431 

 

【緒言】

 筋肉量は加齢とともに減少する。40才以降年間1%の筋肉量が減少すると報告されている。このような加齢に関連した二次的な筋肉量减少は「サルコペニア」とよばれ、様々な医学分野で注目を集め始めている。世界のサルコペニア罹患患者数は2009年には5000万人、2050年には2億人にまで増加すると予想される。 サルコペニアによる障害として移動能力の低下が重要である。高齢者の脆弱性を反映し、身体能力低下のバロメーターとなる。骨粗鬆症性骨折も世界的な人口の高齢化とともに急増している。米国では50才以上の人口の内、1000万人が骨粗鬆症を呈している。これらの患者の内、毎年150万件の骨折が発生し、この内の50%は骨粗鬆症性脊椎椎体骨折(OVF)である。近年のEuropean Vertebral Osteoporosis Study からの報告では、椎体変形の有病率は男性より女性の方が高く、加齢とともにその割合は増加する(女性は50才で5%、75才で25%に増加、男性は10%から18%に増加)。日本整形外科学会の2009年の報告によると、年間200万件の脊椎椎体骨折が発生し、18万件の大腿骨近位部骨折が発生したとされる。1990年、世界保健機構は世界で年間150万件の大腿骨近位部骨折が発生し、2025年には270万件にまで増加すると予想される。この増加分の多くはアジア諸国、特に日本と中国による、と報告した。

 OVFは高齢者の日常生活活動を顕著に障害する。骨折の結果寝たきりとなる高齢者の増加により社会保障のコストが増大し、すでに疲弊した国家財政に致命的な負担を与えてしまう。それ故にサルコペニアの早期診断と治療は骨折予防と医療資源の有効活用に重要となる可能性がある。1990年代の米国ではOVFの直接的な医療費は7億4600ドルであった。英国ではOVFの医療費は1200万ポンドに達すると推定される。

 以前の研究では、我々は大腿骨近位部骨折患者の高いサルコペニア罹患率を報告し、サルコペニアが大腿骨近位部骨折の危険因子であることを示した。しかしながらOVFを受傷した高齢女性のサルコペニアの実情に関する研究は殆ど存在しない。今回の研究で、我々はOVFとサルコペニアの関連を報告する。

 

 

【方法】

 

倫理面に関する記載

 

全ての患者から書面による研究計画の説明と参加同意を取得し、国立長寿医療研究センター倫理委員会による研究計画の認証を得た。研究計画はヘルシンキ宣言に基づいて実施された。

 

研究対象

 

日本国内の単施設の患者を対象とした。 2002年から2009年の間に、急性期OVF を受傷し研究対象施設に入院した55才以上の女性患者を対象とした。感染、腫瘍などによる病的骨折、レントゲン、MRIで新規骨折の所見のない患者、立位転倒より高エネルギーの外傷による患者は除外した。研究期間中、55才以上の246名が研究施設に急性腰痛で入院した。30名(12.2%)が除外された。その内18名(7.3%)は腰痛の原因はOVFでは無かった(原因不明11名、腰部脊柱管狭窄症・腰椎椎間板ヘルニア4名、脊椎カリエス1名、肋骨骨折1名、骨盤骨折1名)。12名(4.9%)は本人もしくは家族から同意が取得できなかった。高エネルギー外傷の患者はいなかった。最終的に、216名(平均79.9±9.1才)を研究対象としOVF群とした。同時期に1849名の急性腰痛のない連続した患者が外来を受診して骨粗鬆症の診断のために2重エネルギー吸光度検査(DXA)を受けた。これらの内、241名は、腰椎もしくは股関節のDXAのみ実施していたため除外した。最終的に1608名(平均69.1±10.9才)の全身DXA検査を受けた患者をNF群とした。本研究は院内倫理委員会承認のもと書面による説明と同意を得た上で実施した。

 

OVFの診断

 

急性期OVFの研究対象とする基準として発症2週以内の急性腰痛があり自立した生活ができない患者とした。放射線検査とMRIを全患者で行った。MRIにて骨髄浮腫所見、骨折線、の片方もしくは双方が椎体内に認められた患者を骨折ありとした。MRIで1ヶ所以上の浮腫所見が有る患者を急性期OVFとした。

 

筋量評価とサルコペニアの定義

 

体組成は全身二重エネルギーX線吸収度法(DXA、DPX-NT、GE Medical Systems Lunar 社、マディソン郡、ウィスコンシン州、米国)を用いて測定した。床上安静による筋委縮の影響を除外するために、DXAは入院後48時間以内に実施した。

 全身DXAは身体の各部位の3つの体組成(骨塩量、脂肪量、除脂肪量)を測定することが出来る。DXAとは伝統的な体組成測定法で、以前から骨密度(BMD)測定に用いられてきた。2種類の異なったエネルギーレベルのレントゲン線を対象者に向けて照射する。それぞれのレントゲン線の吸収度から骨塩量、脂肪量、除脂肪量を推計することが出来る。全身DXAは、身体の部位それぞれの体組成を測定することが出来る。頭部や体幹の除脂肪量には筋肉だけではなく脳や内臓を含む。一方上肢と下肢は骨格筋のみを含む。皮膚と血管の重量は無視できるほどに少ない。上下肢において正確に骨格筋量を測定することが出来る。DXAは十分な正確性と再現性のある方法である。DXAとCTによる横断面積と比較した技術的な誤差は2.5%以内であった。研究および臨床に使用する場合にDXA法が選好されている。筋肉量の絶対値は慎重と相関するため、筋肉量指標(SMI)を次のような式で計算する。「除脂肪量(kg)÷身長(cm)2」。これは体格指数の計算法(体重(kg)÷身長(cm)2)に類似している。上肢SMIは上肢除脂肪量(kg)÷身長(cm)2と定義し、下肢SMIは下肢除脂肪量(kg)÷身長(cm)2と定義した。四肢SMIは上肢SMIと下肢SMIの合計とし、サルコペニアの様々な研究で筋量評価の指標として一般的に使用されている。例えば、Baumgartner らはサルコペニアの診断基準値をDXAによる四肢SMIの若年者平均の-2SDとした。Sanadaらは529名の健康な18才から40才までの若年日本人の平均値からサルコペニアの診断基準値を定めた。これらの報告から、サルコペニアの診断基準として四肢SMIの女性においてSMI<5.36kg/m2をサルコペニアありとした。我々は同時に本研究参加者全員にDXAにて全身BMD測定を行った。  

 

統計学的検討

 

我々はスチューデントのT検定を用いて研究対象群の間の参加者背景を比較検討した。四肢SMIとBMDの関連を調べるため、Pearsonの相関係数と年齢で調整した偏相関を各群で検討した。Mantel– Haenszel 法を用いてサルコペニアの有病率を年代の群(年齢が70才未満、70才から74才、75才から80才、80才以上の各群)で調整し、比較した。筋量减少もしくはサルコペニアがOVF発生の予想因子になるかどうかを判断するため、OVFを独立変量とした多変量のロジスティック回帰分析を行った。サルコペニアモデルでは共変量としてサルコペニア有無を含めた。SMIモデルでは共変量に上肢SMIと下肢SMIを含めた。その他の共変量としてサルコペニアの既知の影響因子である、年齢、身長、体重、全身BMDを選択した。選択した変量の強さとOVF発生と対照群との関連はオッヅ比(OR)と95%信頼区間(CI)で検討した。

 統計学的検討はSPSS version 19.0 for Windows software (IBM社、アーモンク、ニューヨーク州、米国)を用いた。P値は0.05以下を有意とした。

 

 

 

【結果】

 

患者背景

 

 

 

OVF群、NF群の参加者の背景のデータをTable1に示す。年齢、身長、体重、BMD、除脂肪量、SMIはOVF群でNF群より有意に少なかった。

 

 

 

患者背景
Table 1 患者背景

 

 

SMI

 

我々は一般線形モデルを用いてSMIに影響を与える年齢、BMDで調整した後に四肢SMIを比較した(Figure1)。上肢SMI(平均±標準誤差、 95%CI)はOVF群で1.36 ± .020 kg/m2 (1.33–1.41 kg/m2)、  NF群で1.42 ± 0.007 kg/m2 (1.40–1.43 kg/m2) だった。下肢SMI(平均±標準誤差、95%CI)はOVF群で4.27 ± 0.045 kg/m2 (4.18–4.35 kg/m2) 、NF群で4.55 ± 0.016 kg/m2 (4.50–4.56 kg/m2) だった。四肢SMI(平均±標準誤差、95%CI)はOVF群で5.62 ± 0.058 kg/m2 (5.50–5.73 kg/m2) 、NF群で 5.97 ± 0.020 kg/m2 (5.93–6.01 kg/ m2) だった。上肢、下肢、四肢SMIはOVF群でNF群より低値だった(P = 0.004, P < 0.001, P < 0.001)。

 


SMI

Figure 1  脊椎骨折患者と骨折の無い患者との筋量の比較
Figure 1  脊椎骨折患者と骨折の無い患者との筋量の比較

我々は一般線形モデルを用いてSMIに影響を与える年齢、BMDで調整した後に四肢SMIを比較した(Figure1)。上肢SMI(平均±標準誤差、 95%CI)はOVF群で1.36 ± .020 kg/m2 (1.33–1.41 kg/m2)、  NF群で1.42 ± 0.007 kg/m2 (1.40–1.43 kg/m2) だった。下肢SMI(平均±標準誤差、95%CI)はOVF群で4.27 ± 0.045 kg/m2 (4.18–4.35 kg/m2) 、NF群で4.55 ± 0.016 kg/m2 (4.50–4.56 kg/m2) だった。四肢SMI(平均±標準誤差、95%CI)はOVF群で5.62 ± 0.058 kg/m2 (5.50–5.73 kg/m2) 、NF群で 5.97 ± 0.020 kg/m2 (5.93–6.01 kg/ m2) だった。上肢、下肢、四肢SMIはOVF群でNF群より低値だった(P = 0.004, P < 0.001, P < 0.001)。

 

サルコペニアの有病率

 

年齢で調整したサルコペニアの有病率はNF群(25%)よりOVF群(42.3%)で有意に高かった(P < 0.001, Mantel–Haenszel 法を用いて年代にて調整)。

 

SMIとBMDの関係

 

 

Figure 2 筋量と骨量の関係
Figure 2 筋量と骨量の関係

 

OVF群とNF群における筋量とBMDの関係をFigure2に示す。OVF群ではSMIと全身BMDの間に有意な関連は無かった(R = 0.066, P = 0.334)。しかしながらNF群では有意な正の相関が認められた(R = 0.244, P < 0.001 )。さらには年齢で調整した偏相関はOVF群では有意な関連が認められなかった(R = 0.042, P = 0.25)のに対してNF群では有意な相関が認められた(R = 0.25, P < 0.001)。

急性期OVFのリスク因子

 

 

 

Table2では急性期OVF発生のリスクをサルコペニアとSMIそれぞれ別のモデルで評価した多変量ロジスティック回帰分析の結果を示す。OVFの有意なリスク因子はサルコペニア有り(R = 0.25, P < 0.001)と下肢SMI(OR 0.64, P = 0.002)だった。対照的に上肢SMIはOVFの有意なリスク因子ではなかった(P = 0.647)。他の有意なOVFのリスク因子としてはサルコペニアモデルでは年齢(OR 1.09, P<0.001)、体重 (OR 1.03, P = 0.044)、全身BMD (OR 0.01, P\0.001) だった。SMIモデルでは年齢(OR 1.09, P < 0.001)、体重 (OR 1.03, P = 0.032)、全身BMD (OR 0.01, P < 0.001)だった。

Table 2  ロジスティック回帰分析
Table 2  ロジスティック回帰分析による脊椎椎体リスク因子の解析

 

 

【考察】 

今回の単施設での横断研究の目的はMRIで診断した急性期OVF患者におけるサルコペニアの有病率の調査と、DXA で上下肢のSMIを測定することにより、サルコペニアがOVFのリスク因子となるかどうかを検討することである。今回の研究では骨折の無いコントロールと比べて、急性期OVFではサルコペニアの有病率が高く、下肢の筋量が減少していた。

サルコペニアと下肢の筋量减少が急性期OVFのリスク因子であることが明らかになった。一般的なサルコペニアの診断基準は、四肢SMIの若年者平均の−2SDから計算されている。これは診療上において有意な値として決められたものではなく、統計学的な都合で決められた値である。フレイルや機能障害、骨折に対する診療上のエビデンスは非常に限定的である。我々の知る範囲では本研究は急性期の女性のOVF患者におけるサルコペニアの有病率を調査し、サルコペニアと骨折の関係を検討した初めての報告である。

 これまでの研究でサルコペニア、すなわち四肢の筋量低下は骨粗鬆症性骨折のリスク因子の可能性が報告されていた。アルゼンチン人の3,205名の検討では低い除脂肪量が骨粗鬆症性骨折のリスク因子となる可能性を報告した。しかしながら、研究参加者の骨折は急性期ではなく、陳旧性の骨折であった。そして研究者はBMDによる除脂肪量の調整を行っていなかった。このような研究では、骨折後の長期の廃用性萎縮の可能性を除外できない。今回の研究では我々はBMDや他の因子で調整した後でも四肢SMIの减少が女性の急性期OVFのリスク因子となる事を示した。上肢と下肢の筋肉量は両方共OVF患者で著明に減少していた。一方、我々の以前の研究では大腿骨近位部骨折患者において上肢筋量は減少していなかった。サルコペニアは身体のバランスのみならず高齢者の全身状態に影響する。骨格筋は運動器官だけではなく全身の内臓にも分布している。骨盤底筋群の筋力低下は高齢者の尿失禁の原因となり尿路感染の危険リスクとなる。老年科病棟に入院した高齢者の内、サルコペニアを合併した者は院内発生の感染症のリスクが高い事が報告されている。一般に嚥下筋や呼吸筋の機能低下は誤嚥やそれに引き続く低栄養のリスク因子とされる。筋肉量の低下はインスリン感受性の悪化を引き起こし糖尿病を引き起こす。サルコペニアによって引き起こされる低栄養や糖尿病、その他の全身性疾患は骨代謝異常と筋肉の减少を同時に引き起こす。この様に、サルコペニアは高齢者の脆弱性の有用なパラメーターでも有る。

 下肢サルコペニア、すなわち下肢筋肉量の减少は、バランス機能の低下に結びつくことが知られている。Health, Aging and Body Composition Study からは、3,075名の検討の結果、大腿中間部の筋横断面積が少ない者ほど下肢の機能が低いと報告された。さらに1,711名の地域住民の検討では除脂肪量は大腿近位の軸方向および屈曲の筋力と座屈に対する耐性に関連すると報告した。ゆえに、下肢筋量の低下した患者は転倒とそれに引き続く骨折を引き起こす危険が高い。我々の研究では下肢の筋量はOVF患者で低く、この結果はこれまでの報告と矛盾しないものであった。

 多変量ロジスティック回帰解析の結果、新規OVFのリスクはサルコペニアの患者で2倍高かった。下肢SMIが1.0kg/m2减少するとOVFのリスクは1.6倍になった。下肢筋量の低下(例えば下肢サルコペニア)は骨折のリスク因子と考えられた。この結果は我々の以前の大腿骨近位部骨折の結果の類似している。下肢筋力測定は臨床の現場では難しいため、握力が膝の伸展屈曲テストの代わりとして用いられ、欧州のサルコペニアの定義と診断のコンセンサスにおいても推奨されている。しかしながら、もし測定器具が利用できるのであれば、我々は下肢の筋量と筋力測定が骨粗鬆症性骨折の予測に良いと推奨する。さらにサルコペニアは独立したOVFの危険因子であった。将来的には下肢の筋力トレーニングと栄養療法と組み合わせてサルコペニアの治療、特に下肢サルコペニアの治療を行うことが骨粗鬆症性骨折の予防する鍵になる可能性がある。

 これまで急性期OVF患者のサルコペニアの有病率は知られていなかった。Rodondi らは高齢者介護施設入居者において、DXAで診断したOVFの有病率は36%、サルコペニアの有病率は22%だと報告した。しかし彼らはOVF患者におけるサルコペニアの有病率は示していない。他の報告からは63名のOVFの既往のある女性のサルコペニアの有病率は23−33%と報告した。しかしながらこの報告は対象となる患者数が少なく急性期のOVFは検討していなかった。本研究では急性期の女性OVF患者、平均70歳のサルコペニアの有病率は42%だった。この割合はOVFの無い女性患者の割合(25%)より高かった。BaumgartnerらはNew Mexico Elder Health Survey で地域住民女性のサルコペニアの有病率は70才以上で33-36%であり、70歳未満では23-24%と報告した。本研究では骨折のない患者群の値は過去の報告と類似していて矛盾は無かった。

 BMDと筋量の関連は様々な住民を対象とした疫学調査で示されている。600人の地域住民を対象とした横断研究で、サルコペニアはBMD低下の独立した危険因子だった。他の研究ではサルコペニアは低いBMDと関連していた。これまで知られている骨粗鬆症の危険因子、例えば低栄養、廃用、ビタミンD欠乏はサルコペニアの危険因子と共通している。これらの事実は加齢の過程の中で骨量と筋量の减少が同時に起きる事を示している。 さらに、OVFにより床上安静期間の不動による廃用が悪化し、筋肉量の减少が加速する。骨粗鬆症性骨折患者における筋量とBMDの関連は未だに議論が分かれるところである。Di Monacoらは大腿骨近位部骨折を受傷してから平均23日後の測定の結果では、四肢SMIとBMDに有意な相関を認めたと報告した。対照的に、我々の以前の研究で大腿骨近位部骨折受傷直後に測定した結果ではそのような関連は認められなかった。本研究では急性期のOVF患者において、筋量とBMDの間には関連を認めなかった。しかしながら骨折のない患者では正の相関を認めた。地域住民とは異なり、OVFを受傷した患者はSMIが低く、かつBMDが正常な患者がいるのかもしれない。そして転倒と骨折のリスクは高いが、骨粗鬆症では無い患者群が存在する可能性がある。サルコペニアは独立した骨折の潜在的な危険因子であるため、将来的には正常BMDかつ低SMIの患者群においても骨折の予防対策が必要かもしれない。本研究ではいくつかのリミテーションがある。OVF群の参加者は急性期OVFのみに限られている。陳旧性の骨折や形態学的骨折患者は本研究では検討していない。陳旧性の骨折や形態学的骨折により潜在的に日常生活の活動性が減少しており、OVF群、NF群双方において筋量低下の因子になっている可能性はある。本研究の対象者の筋量は骨折の既往のない健康なボランティアよりも少ないかもしれない。我々はOVF患者と外来患者のコントロール群との差を過小評価している可能性がある。2つ目のリミテーションは身体計測をDXAのみしか行っていない事である。筋の機能、筋力、合併症、受傷前の活動度を評価していない。身体機能と筋力の評価は近年のEuropean Working Group on Sarcopenia in Older People や、International Working Group on Sarcopeniaの診断基準に含まれている。筋力や身体機能の評価は日常生活の活動を評価するのに重要である。将来的には我々は筋力と身体機能を独立因子としてサルコペニアとOVFの関連を評価したい。近年の報告では入院患者の床上安静と低栄養がサルコペニアと入院による身体機能障害を引き起こすことを指摘した。しかしながら、本研究では筋量の評価を入院後48時間以内に行った。この事から床上安静の影響は少ないと考えられる。特に女性において筋力はSMIよりも早く減少するとされる。そして個人によって筋量と筋力の减少のスピードは異なる。将来的には多数の症例をもって、このような様々な共変量を加味して筋量と骨折の関係を明らかにしたい。

 結語として、年齢、全身BMDで調整した後、骨折のないコントロールと比較してOVFの患者では下肢の筋量低下と高いサルコペニア有病率を認めた。下肢筋量と、若年者平均−2SDの基準値による、サルコペニアの診断はOVFの独立した危険因子だった。サルコペニアと下肢サルコペニアの治療は、骨粗鬆症性骨折の予防となる可能性がある。

 

 

2016-11-12

自己紹介

飛田 哲朗 Tetsuro Hida

現在米国に留学中。

脊椎外科医の仕事の傍ら、サルコペニアの研究をしています。

 

 

好きなテレビ:

未来世紀ジパング

 

池上彰さんが出る回とか、最高ですね。テレ東経済番組の面白さは安定してます。

 

好きな映画:

アメリカのSF映画。遺伝子エリートと雑草魂の葛藤がたまりません。同じアンドリュー・ニコル監督の「In Time(タイム)」もいいですね。

 

息子の難病の治療法を開発してしまう銀行家の父の、実話を元にした物語。熱意と戦略がそろえば誰でも病気を治せる可能性があるんですね。

Follow-up of 89 asymptomatic patients with adrenoleukodystrophy treated with Lorenzo's oil

論文のラストオーサーが父親。

 

好きな飲み物:


最近は第3のビールの美味しさにおどろいています。

 

 

 

リンク

朝日新聞、 「筋肉少なく肥満、高齢者の1割 名大、北海道の323人分析」(平成26年6月3日夕刊)

八雲町での疫学調査を取り上げていただきました。

名古屋テレビ UP! 注目ニュース「サルコペニア肥満」

2013年8月2日に放送された内容です。僕の研究を取り上げていただきました。とてもわかりやすくまとまっています。

 

リハビリテーション栄養・サルコペニア(筋減弱症)

サルコペニアのエビデンスが集積しています。勉強になります。

 

整形外科 論文ナナメ読み (JBJSなどなど)

JBJSの要約がまめに更新されています。抄読会のネタ探しにぴったりです。

整形外科医のための英語ペラペラ道場

英語論文を書く際の道しるべです。