側弯症術後の呼吸機能に関しては諸説あり、改善するのか悪化するのかはっきりしません。今回は、特発性側弯症の遺残例を中心とした成人脊柱変形の患者を対象に、術後の呼吸機能を調べた文献を紹介します。側弯の大家である、Lenke先生の施設からの論文です。
Pulmonary Function Following Adult Spinal Deformity Surgery Minimum Two-Year Follow-up
成人変形術後の呼吸機能 2年以上経過観察
用語の解説
FEV1 一秒量。一秒間にどれだけ多くの息を吐けるかを示すもの。forced expiratory volume in one secondの略。
%FEV 身長・年齢・性別から得られる予測値(標準値)に対する%。 80%以上が正常。
(FEV1% 息を努力して吐き出したときに呼出される努力肺活量のうち最初の一秒間に吐き出された量の割合のこと。)
FVC 努力肺活量
要約
背景
成人脊柱変形の呼吸機能に関する文献は限られている。仮説;術前の呼吸機能低下(1秒呼出率FEV1>65%もしくは)がある患者もしくは再手術患者は呼吸機能悪化のリスクが有る。
方法
前向き研究。成人脊柱変形患者164名(平均年齢45.9才)に術前に呼吸機能検査を行った。最低2年間(平均2.8年)フォローした。100名は初回手術だった。64名は再手術だった。多くの患者は(77%)は後方単独手術だった。154名の画像からT5-T12のカーブの大きさと矯正を測定した。
結果
コブ角は47.4度から24.9度に改善した。(P<0.001)胸椎後弯角は35.5度から30度に有意に改善した。(P<0.001)呼吸機能の絶対量と%予想値は有意に減少した。FEV1とFVCは5.3%、5.7%減少した。臨床上問題となる呼吸機能低下(FEV1 10%以上の低下)は27%の患者に認められた。ただし、術前呼吸不全のあった患者数は、有意な増加は認めなかった(17名→23名)。 術前に呼吸機能障害のあった患者は、無かった患者とくらべて有意なFEV1の改善を認めた。(2.7% vs -6.2%) 再手術を受けた患者は、初回手術患者とくらべて予測呼出率は変わらなかった。しかし再手術は術後肺機能低下が有意に多かった(36% vs 22%, p = 0.05)。 術式(前方、前後方、後方)やUIVの違いは呼吸機能に影響しなかった。
結語
成人脊柱変形矯正の手術で、呼吸機能検査の絶対量と%予測値ともに術後に有意な検査を認めた。
用語の解説
FEV1 一秒量。一秒間にどれだけ多くの息を吐けるかを示すもの。forced expiratory volume in one secondの略。
%FEV 身長・年齢・性別から得られる予測値(標準値)に対する%。 80%以上が正常。
(FEV1% 息を努力して吐き出したときに呼出される努力肺活量のうち最初の一秒間に吐き出された量の割合のこと。)
FVC 努力肺活量
要約
背景
成人脊柱変形の呼吸機能に関する文献は限られている。仮説;術前の呼吸機能低下(1秒呼出率FEV1>65%もしくは)がある患者もしくは再手術患者は呼吸機能悪化のリスクが有る。
方法
前向き研究。成人脊柱変形患者164名(平均年齢45.9才)に術前に呼吸機能検査を行った。最低2年間(平均2.8年)フォローした。100名は初回手術だった。64名は再手術だった。多くの患者は(77%)は後方単独手術だった。154名の画像からT5-T12のカーブの大きさと矯正を測定した。
結果
コブ角は47.4度から24.9度に改善した。(P<0.001)胸椎後弯角は35.5度から30度に有意に改善した。(P<0.001)呼吸機能の絶対量と%予想量は有意に減少した。FEV1とFVCは5.3%、5.7%減少した。臨床上問題となる呼吸機能低下(FEV1 10%以上の低下)は27%の患者に認められた。ただし、術前呼吸不全のあった患者数は、有意な増加は認めなかった(17名→23名)。 術前に呼吸機能障害のあった患者は、無かった患者とくらべて有意なFEV1の改善を認めた。(2.7% vs -6.2%) 再手術を受けた患者は、初回手術患者とくらべて予測呼出率は変わらなかった。しかし再手術は術後肺機能低下が有意に多かった(36% vs 22%, p = 0.05)。 術式(前方、前後方、後方)や固定上端椎(UIV)の違いは呼吸機能に影響しなかった。
結語
成人脊柱変形矯正の手術で、呼吸機能検査の絶対量と%予測値ともに術後に有意な検査を認めた。
本文
思春期側弯症の術後の肺機能に関して山程文献があるにも関わらず、成人脊柱変形矯正手術の肺機能に与える影響のエビデンスは限られている。 自然経過による呼吸機能の低下は避けられないが、未治療の脊柱変形患者ではより低下する。成人脊柱変形の患者は、時に著名な呼吸機能の低下をきたしている場合がある。その為、矯正固定術が呼吸機能を改善しうるかどうか、もしくは呼吸機能をあっかさせるかどうかは重要な問題であった。術前の呼吸機能のリスク評価は重要である。 変形矯正は呼吸機能を回復させると信じる外科医もいれば、逆に悪化させると考える外科医もいる。
本研究の目的は、脊柱変形の手術が呼吸機能に与える効果を評価し、術前の呼吸機能低下や再手術が呼吸機能に与える影響を調べることである。術前の呼吸機能低下(%FEV1<65%と定義)と再手術は機能低下のリスクとなると仮説を立てた。
方法
前向き研究。単施設。1996年から2009年の間。18才以上の成人脊柱変形患者。固定範囲を問わず。呼吸器疾患除外。術前に呼吸機能検査を行った。最低2年間(平均2.8年)フォローした。1年後、2年後に呼吸機能検査をした。 中等度・重度呼吸機能障害である%FEV1<65%を呼吸機能低下と定義した。 。
結果
Table1.データが揃ったのは164名だった(平均年齢45.9才、女性91.5%)。100名は初回手術だった。64名は再手術だった。多くの患者は(77%)は後方単独手術だった。特発性側弯症、女性が多い。
154名の画像からT5-T12のカーブの大きさと矯正を測定した。
コブ角は47.4度から24.9度に改善した。(P<0.001)胸椎後弯角は35.5度から30度に有意に改善した。(P<0.001)呼吸機能の絶対量と%予想量は有意に減少した。FEV1とFVCは5.3%、5.7%減少した。臨床上問題となる呼吸機能低下(FEV1 10%以上の低下)は27%の患者に認められた。ただし、術前呼吸不全のあった患者数は、有意な増加は認めなかった(17名→23名)。 術前に呼吸機能障害のあった患者は、無かった患者とくらべて有意なFEV1の改善を認めた。(2.7% vs -6.2%) 再手術を受けた患者は、初回手術患者とくらべて予測呼出率は変わらなかった。しかし再手術は術後肺機能低下が有意に多かった(36% vs 22%, p = 0.05)。 術式(前方、前後方、後方)やUIVの違いは呼吸機能に影響しなかった。
ディスカッション
思春期側弯症の術後の肺機能の検査の研究は沢山ある。側弯は3次元の脊椎と胸郭のねじれであり、通常は肺機能が低下する。原因は胸郭の硬直、横隔膜の機能低下、不均一な肺の拡張(凸側で减少)と考えられている。故に側弯矯正が肺機能を改善させると仮定する外科医もいる。多くの研究があるにも関わらず結論はでておらず、肺機能が大幅に改善するとする報告もあるし、変化しないとする報告もあれば、逆に悪化するとする報告もある。
成人に関しては、あまりわかっていない。ちょうど肺機能が20代中盤にピークを迎え、その後徐々に機能が低下するため、この世代に対する肺機能の研究が難しい。合併症や喫煙に影響される。平均年齢47才の21人の後側湾患者での検討では、肺活量低下、低酸素、サチュレーション低下、活動量低下が認められた。少ない症例での検討ではあるが、カーブの大きさとは関係なかった。
肺機能に関わる内科的問題は生命予後に影響する重要な問題である。成人脊柱変形おいて開胸手術による手術は後方単独に比べて18倍の肺合併症のリスクがある。Pehrsson らは、24名の思春期特発性側弯の20年フォローの検討で肺機能の低下は年齢相応のものであると報告した。さらに、110度以上のカーブで肺活量<45%の呼吸機能障害のリスクになると報告した。Pehrssonのちに107名の検討でも同様の結果と報告した。彼らは、手術で呼吸機能低下が予防できるのではと考えた。
Wongらは14名のthoracotomy と前方固定を受けた成人脊柱変形患者の検討で、平均32週のフォローで呼吸機能の低下を認めたため、前方手術は呼吸機能改善に結びつかないとした。
本研究で用いた肺機能検査は米国呼吸器学会のガイドラインに定められているものだ。FEV1は症状や、疾患重症度、生命予後に影響する指標であることが知られている。
リミテーションは、対象が同一疾患ではないこと。サブグループ解析の症例数が少ないこと。強みは症例数が多い、単一施設、二名の外科医のみで治療、である。
結語
成人脊柱変形術後2年フォロ-で呼吸機能は有意に減少した。術前から呼吸機能が低下していた患者は、術後に改善した。 再手術は臨床上意味のある呼吸機能低下患者が多かった。だが、手術方法(前方、後方アプローチ)、UIVは呼吸機能に影響しなかった。
2016-01-28