高齢者の筋肉の質が若者と比べて劣ることは、高齢者医療に関わる方、特に一度でも手術で高齢者と若年者の筋肉を触った経験のある方にとっては常識と言って良いかも知れません。(Lang, et al. JBMR 2010.) この筋肉の質の低下には、筋肉の脂肪化と線維化が関わっています。 この原因として、あらたな内在性の細胞populationが判明したと発表されましたので、下に引用します。
Muscle injury activates resident fibro/adipogenic progenitors that facilitate myogenesis
Aaron W. B. Joe1,2, Lin Yi1,5, Anuradha Natarajan1,5, Fabien Le Grand4, Leslie So1, Joy Wang1, Michael A. Rudnicki4 & Fabio M. V. Rossi1,3
Nature Cell Biology 12, 153 - 163 (2010)
Impact factor : 19.527
「筋損傷は、内在性の繊維・脂肪前駆細胞を活性化させ、筋発生を促進する。」
要約
効果的な組織の再生には、様々な種類の細胞が関与する。今回、筆者らは筋肉内に存在し、筋肉とは異なったlineageの細胞である線維/脂肪細胞前駆細胞(FAPs)を紹介する。脂肪浸潤モデルマウスの皮下もしくは筋肉内に純化したFAPを移植すると、白色脂肪が形成される。 しかし、健康なマウスでは、脂肪はできなかった。 このことから何らかの環境因子がFAPの生着に関与する。 これらの細胞は普段は筋肉のなかで静止期にあるが、損傷に反応して、充分に増殖するようになる。 co-cultureをするとFAPは筋繊維になることはないが、プライマリーの筋前駆細胞の分化を促進させる。
まとめると、FAPは損傷部位に広がることにより、筋前駆細胞を増殖するための分化の元となる一時的なシグナルを提供しているのである。